観劇鑑賞メモ

諸々の自分用メモです。4季のオタクです。

2023年12月16日ウィキッド(秋)

2階センブロ
感想濃いめ。
よしながふみの『大奥』と、ディズニー映画の『プリンセスと魔法のキス』のネタバレを含むので注意してください。
あと俳優さんを名指しで批判してるのでそれも注意してください。(人格否定の意図はありません)



・隣の人、前に他演目でも隣席だった人だと思う。そんなことあるんだ。

・音響(音量?)が!直りましたね?
前と違ってセンブロだったから響きが違ったりもする……のか……?
とはいえ前回のような物足りなさがなく楽器それぞれの音が聴こえたので音楽をちゃんと楽しめた。
それでもやっぱり生に勝るものはないのだけど。

・衣裳ほんと素晴らしい

・音楽ほんと素晴らしい

・振付も素晴らしいよねほんとに

ダンスホールで周り(取巻きとか)を気にせずエルファバと踊ったグリンダが、一幕終わりではエルファバの手を取れなかったのだなと。
それはグリンダの状況理解の違いかもしれない、前者では「どうしよう」の罪悪感があったのが後者には無かったり、オズ陛下の企みをあそこまで聞いても「まあ、ありがとうございます」と陛下の手を取ってしまうグリンダにとっての優先順位の差かもしれない(グリンダは賢くない)
ダンスホールのときは「気にしてないフリをしてるだけ」と思えて寄り添えたけど、一幕終わりでは彼女にエルファバの気持ちは分からなくて寄り添えなかったのかも。

・エルファバ、モリブルの「お話した通り」を聞いて「あなたの計画」と気付くのとても賢いし、そこが多分グリンダには分かってない。

・むかしは登場人物に感情移入とかしなかった、きがするけど、今は「大学生」ゆえの愚かしさも、「大人」ゆえの愚かしさもわかるように思う。

フィエロがあくまでもグリンダの恋人という肩書きを選びながらやりたいことをやろうとしているのとか。
そして自由なふりをしているだけで幸せではない。
もともと頭が空っぽだから、エルファバとの生活という望むものを手に入れるためなら、良い魔女の婚約者という肩書きと護衛隊長という地位を利用する。利用する、という形での「頭」は使うようになる。たぶん頭が空っぽな人はそういう技は身に付けていく。それは賢さとは別。ということなのかな。
それにグリンダに冷たくするつもりは本人としては恐らくなくて「君がそれで幸せなら結婚する」というテキトーなことを言う。まあ私も頭が空っぽだからなんとなくその心分かります。

・前から思ってたけどネッサってはじめからエルファバに対して別に優しくない(冷たくもないけど)のに、エルファバが全部自分の都合の良いように受け取ってて、その末に二幕で「自分のお願いなら聞いてくれる」と思い込んでネッサのところに来るよね。
ネッサにとってみれば自分ひとりでやりたいのにエルファバがついてきて自分はいつまでも「何もできない人間」にされるし、エルファバが飛び立ってからは更に「救われない人間」になってしまうのだから、大学時代に出会った「運命の人」は逃せない。
久しぶりにやってきたエルファバに悪態つけるようにはなっても、エルファバの「力」には頼りたいからエルファバに行かないでって言ってしまう。
そして思い通りにいかないことは全部エルファバのせいになる。
もしかしたらエルファバ自身が思っていたよりもネッサは身の回りのことについて「エルファバのせい」と思い続けてきたのかもしれない。
ダンスホールでエルファバ登場後に険しい表情で車椅子を速く回して去るネッサ……)

・ネッサが「エルファバのせいよ……エルファバよ!!」って叫ぶとこ、よしながふみ大奥(ドラマ)で安達祐実(役名忘れた)が田沼意次に親族の接種を死亡リスク承知で頼み込んだけど結局それで死んじゃった時に安達祐実が「田沼ァァア!!」って叫んでたシーンと似てる。憎き相手に頼んだのは自分なのに責任転嫁して憎しみ募らせてるところが。

・小林エルファバのエレカナメナメうますぎ……というか力強さと正確さを歌唱力でコントロールする歌い方が、ミュージカルだからこそ活きるし、それをきちんと彼女なりのエルファバという役の枠内いっぱいで表現していてとても気持ちが良かった。
アレンジは個人的にやっているのかディレクションなのか分からないけど邪魔じゃない程度でちょうどいいと思う。
歌う上での「きれいに歌う」をやらない、でもきちんと伝わるし聞き取れる、非常にエルファバらしいエルファバだった。
きれいでも弱くてもエルファバにはならないもんね……。
エルファバって今まで大学時代から徐々に「大人の女性」、悪く言えば「オンナ」になっていく感じがしてそれが個人的にいけ好かなかったんだけど、小林エルファバはエルファバのまま大人になっていて、かつ「愛すること」を貫いていき、それでも人としての弱さがあるって感じで自分好みだった。

・良い魔女の「良い」もGood Newsと同じ「良い」なのかな…goodであることとは……。
冒頭の「なぜ悪い人はいるんですか」でgoodとbadの対比が示唆されているのかと思うけどこれに答えることは終盤につれてどんどん難しくなる。
グリンダの「良い魔女」は誰にとっての良いなんだろうか。それが必要なものとして受け入れられる世の中、オズもモリブルもいなくなってもそれが変わらない世の中。

・モリブルが牢屋に連れてかれるの何の罪ってことになるんだ?と思ってなにかに似てるな〜って考えてたんだけど、あれだ、プリキスで王子の従者が逮捕されるシーンだ(笑)カジュアル逮捕〜
でも実際オズの国の法制度って人権意識低そうだし、その時の最高権力者の命令でどうにでもなりそう。

フィエロはりつけを前に「良い魔女の命令が聞けないの!?」ってとこも、結局(その状況での)良い魔女というポストにはあまり権力は無いってことなのかな。
ところであそこで「恐れながらご命令は陛下直々でないと……」みたいな台詞思い出してそれもずっとなんだか考えてたんだけど打ってて思い出した、アラジンだ。

・「グリンダはネッサが家の下敷きになったのは自分のせいだと気付かないのか?」という件、そういえば私はあれがグリンダのせいだと思ったこと無い。発端はグリンダでもそれを材料にして計画して実行したのはモリブルじゃん?と思っていた。
あとグリンダは頭が悪いからそこまで思い当たらないと思うし、ちょっと違和感あるくらいじゃ「よく分からないけどたぶん事故」の範疇出ないよ。
なにより立場があるから一人じゃモリブルを追及できるほど頑張れない。それほどグリンダにとって立場って重要。
エルファバがいなくなったという喪失感と、オズの弱みを握って追い出せたことが重なって、やっとモリブルを捕らえる。けど理屈ではうまくできないからそれっぽい理由つけて独裁政治みたいな方法でやるしかなかった。(グリンダ自身そこまで考えてないけど)っていうことなのかなと思った。

・オズという最高権力者が突然ふわっとした理由で「引退」と言いつつ失脚するのも、すごくリアルに感じる。

・ネッサの言う「お尋ね者」はつまり指名手配犯ということなので、最近指名手配された香港の民主活動家たちのことを思った。
その後のシーンでオズがエルファバに甘い言葉を囁やき思い通りにしようとするところとか、周庭さんを帰国させようとする香港警察じゃん〜!
いつの時代もどこの国でも言論統制は独裁の肝なんですね。

・エルファバと再会した時のディラモンド先生、服がすごく汚れていて、人権を無視した(「動物」扱いの)生活を強いられているのが分かるし、オズの「黙らせるにはこうするしかなかった」という台詞から、どんな形にせよ厳しい拷問をされたのが分かる……。
大逆事件の「取り調べ」のようなことではないかと思う。

・ボックの最終的な行動も、ちょっと分かると思った。共感じゃなくて、「そういう男性もいるかもな〜」という想像。
大学時代はネッサへの罪悪感もあるから優しくできるけど、そのネッサが自分の自由を奪っていると感じるようになったなら、優しくなんてできないよね。
一方で、自分の理想の女性であるグリンダは、自分の自由も奪わない(ほぼ他人だから当たり前)し、悪いところなにもないよね。自分に振り向いてくれないのは自分の想いを正確に知らないせいだって思うよね。グリンダに想いを伝えたいというのは、「ワンチャンあるかも」とかそういうレベルじゃない。自分の置かれてる環境は正しくなくて、その環境からグリンダが救ってくれると信じてる。そのくらい視野が狭くてコミュニケーション経験が浅いんだよ。ゼロかイチかで動いてるというか、イチしかないというか。
仮にネッサに魔法を掛けられずにグリンダの元に辿り着けても、フィエロ又はグリンダ本人に逆恨みしてテロリストになってそう。
エルファバについても逆恨みだもんな……。

・中山グリンダおばかぽい歌い方うまい。
ポピュラーでそういう歌声維持してるのすごい。
グリンダのベッドって枕とクッションが多すぎて寝るとこなさそうなの笑う。実用性がないけどかわいいのグリンダっぽい。

・富永フィエロ、ダンスとお歌とっても上手!なのだが、それを打ち消すくらい台詞が下手で、台本以上の情報が何も伝わってこなかった……。
それともあれか、テキトー人間を演じようとした結果、語尾が伸びてブレる台詞回しになったのか?
四季って母音法意識しすぎて棒読みになるパターン多いけど、そっちでもなく音の分離もできてなくて棒読みだったので、四季の稽古受けてもそういう風になるんだ……と思った。

・涼太陛下、思っていたよりもロマンスグレーを演じていた。いつもの声より年老いた演技をしている……?かどうかは分からんが、しっくり来たし、若い頃に人妻誑かしてたのよく分かる。

・冒頭はそんなに笑わない客席、儀式みたいだよね。神事やお能を見てるみたい。



キャスト

グリンダ 中山 理沙
エルファバ 小林 美沙希
ネッサローズ 守山 ちひろ
マダム・モリブル 秋本 みな子
フィエロ 富永 雄翔
ボック 緒方 隆成
ディラモンド教授 田辺 容
オズの魔法使い 鈴木 涼太

【男性アンサンブル】
川畑 和寛
権頭 雄太朗
熊川 剣一
佐野 隼平
健心
岸 佳宏
今村 綱利
奥村 響
長友 デビッド洋輔

【女性アンサンブル】
渡辺 夕紀
古木 瞳
新宮 有香子
高木 千晶
柏谷 巴絵
光井 さや
榊山 玲子
小島 光葉
結城 湊海